佐藤浩市主演の映画「64(ロクヨン)」の原作本を読んだ感想

64(ロクヨン)

64(ロクヨン)

元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。

2015年4月にNHKでドラマ化され、2016年5月には映画の前編が公開された「64(ロクヨン)」の原作本で、2012年に出版されたものです。

カテゴリー的には一応ミステリーに属するようです。

 

昭和64年に実際に起きた事件がモデル

この小説は、タイトルにもなっている通称64(ロクヨン)と呼ばれる1週間しか存在しなかった”昭和64年”に実際に起きた「群馬 功明ちゃん誘拐殺人事件」という身代金誘拐殺人事件をもとに書かれています。

当時わたしは10歳で、年号が平成に変わったその日、当時内閣官房長官だった小渕恵三氏が、「平成」と書かれたフリップを持って新しい元号を発表していた映像は今でもよく覚えています。

実際に起きたこの事件は、群馬県にある上毛新聞社の元記者である著者の横山秀夫が新聞社に在籍中に起きた未解決事件です。

小説では舞台はD県警となっていますが、映画では実際の事件と同様群馬県警の設定とされています。NHK公式ページを見る限りは、昨年放送されたドラマのほうではD県警となっていました。

元新聞記者が書いた小説らしく警察の内部事情が事細かに書かれており、その官僚組織内での部署間の軋轢や権力争いなどの描写は、池井戸潤が描く銀行内部とよく似ています。

私はそういった組織とは無縁の為、人ごとのように「くだらないな~」と思いながら読んでいましたが、いざそういう環境に身を置かれれば官僚的思考に染まっていくのかもしれないな、とも思いました。

 

事件が起きるまでが長すぎる

事件が起きるまでの前置きがとにかく長い。新聞記者と刑事課、刑事課と警務課に挟まれて葛藤する元刑事の広報官特有の苦悩や、複雑に絡み合った人間ドラマの描写が続き、そういった内容を楽しめる人にとっては退屈しないでしょうが、読みやすくわかりやすいエンタメ小説に慣れきった私にとっては、特に大きなヤマ場のない前置き部分があまりにも退屈すぎました。

広報官の三上が立場を越えて新聞記者と本音でぶつかり合う、という胸が熱くなるようなシーンもあるにはありましたが全般的に冗長に感じました。

下巻の中盤あたりにようやく事件が発生(遅っ!)。その先は怒涛の勢いで話は進み、まさかの展開を迎えます。そして事件の真相が明かされこれまでの伏線をいっきに回収していきます。

 

スッキリしない結末

これまでの伏線がひとつにつながり真相が明らかになりますが、残念ながら事件解決とはいいがたい結末でした。池井戸潤の作品「株価暴落」と似ていて、これからすべて解決していくぜ!ということろで話は終わってしまいます。

ネタばれになるので詳細は伏せますが、ミステリーのはずなのにあまりに未解決の問題が多く残るためどうもスッキリしません。

 

映画もいいけど小説もぜひ

事件発生までは退屈で、途中何度も居眠りしてしまいましたが、今まで知らなかった警察組織の内部事情を知ることができたのは収穫でしたし、事件発生後は躍動感がありドキドキしながら読めました。

映画とドラマのキャストは、この小説を読み終えてからチェックしました。主人公である広報官の三上は、小説では強面であまり女性にモテるタイプではないので、映画の佐藤浩市よりドラマのほうのピエール瀧のほうが三上のイメージに合っていると思いましたが、まあ、映画はビジュアルも重要ですし、あくまで映画は独立したひとつの作品と思えば理解はできます。

上下巻あってちょっと話が冗長ですが、映画版に興味を持たれたなら小説のほうもぜひチェックしてみてください。

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)