なぜか急に再び売れだした筒井康隆の「旅のラゴス」を読んだ感想

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旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

Kindle版がなかったためしかたなく紙の本を購入

タイトルと表紙絵から伝わってくる冒険のワクワク感。前から気になっていたSF小説だったのですが、Kindle版がないことがネックで読むのをためらっていました。

Kindle化されたら絶対読むぞと思いつつ、AmazonにKindle化のリクエストもだして待っていたものの、いつまで経ってもいっこうにKindle版がリリースされる気配はありません。

ふだん紙の本はほとんど読まなくなっていたのですが、この本はあまりに面白そうでしたのでKindle化されるまで待てずについに紙の本を購入することにしました。

2018年7月現在もいまだKindle化されておりません。

 

この一冊にラゴスの一生がつまっている

1話完結の短編連作という形態をとりつつ、生涯にわたり旅を続けたラゴスの一生が綴られております。細かい心理描写や経緯が省略されておりますので、テンポよく話は進んでいくためとても読みやすいです。

ひとつひとつの話に深みはないものの、ラゴスの人生がぎゅっと詰め込まれています。それほどページ数は多くなく、あっという間に読み終えてしまうくらいですが、読後は一生分の時間を費やしたような疲労感と達成感を得ることができ、なんだか自分も年をとったような錯覚を味わいました。

 

30年前の作品なのに昨年なぜかバカ売れ

ハレー彗星が近づいた1986年に出版された作品(新潮文庫は1994年〜)で、大ヒットはしないまでも以来ロングセラーを保ってきたこの作品が、2015年になぜか突如バカ売れしました。

出版元の新潮社のサイトによると、

 毎年3,000~4,000冊ぐらい売れていた本書の売れ行きが加速し始めたのは昨年の初めごろ。ちょうど活字を大きくしたタイミングでしたが、それだけでこれほどまでに売れるようになった例はありません。なんと、この1年あまりで10万部を超える大増刷となったのです。なぜこんなに売れているのでしょう? 実は、私たちにも分かりません。

とあり、出版社が売れるきっかけを仕掛けたわけではなさそうです。

近年SNSが非常に浸透してきていますから、本当にいいものは、きっかけさえ与えれば再びブームを起こせる可能性を秘めているのかもしれないですね。

 

期待を裏切らないおもしろさ

この作品にかかわらず、こういった冒険ものは本の世界に入り込んで未知の世界を体験できるのがいいところですね。

旅のラゴスは読み始めた瞬間から、ラゴスが住む魅力あふれる異世界に引き込まれました。ページ数が少ないこともあって遅読の私にとしてはめずらしく最後までノンストップでいっきに読むことができました。

ページ数が少ないからといって決してもの足りなく感じることはなく、読後はとても充実感を得られました。

 

旅好き、ファンタジー好きなら読んで損はなし

まだ見ぬ世界を一生かけて旅をする。それだけでワクワクしますし、実際期待通りの物語でした。

惜しむらくは電子書籍で読めなかったこと。より多くの人に気軽に読んでいただくためにも、一刻も早くKindle化してほしい小説です。

冒険や旅が好きな方、ファンタジー好きな人、本の世界に入り込んで新たな体験をしたい人におすすめの1冊です。

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)