筒井康隆の小説「富豪刑事」を読んだ感想

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富豪刑事 (新潮文庫)

富豪刑事 (新潮文庫)

キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事"こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの"の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦する。

1978年に単行本化された連作短編小説です。

読みやすい文章で短編で全4作なので、遅読の私でもあっという間に読み終わりました。2005年に深田恭子主演で(原作とは性別が異なります)ドラマ化もされています。

 

全4作短編の富豪刑事

富豪刑事の囮

4人まで絞り込んだ五億円強奪事件の容疑者に囮として接触して、金の力で犯人をあぶり出す富豪刑事。

 

密室の富豪刑事

金の力で密室殺人のトリックを暴き、犯人を追い詰める富豪刑事。

 

富豪刑事のスティング

金の力での不可解な誘拐事件を解決する富豪刑事。

 

ホテルの富豪刑事

暴力団同士の争いを食い止めるため金の力を使う富豪刑事。思わぬ事件が発生するも金の力を使わずに推理力のみで事件を解決する富豪刑事。

 

推理小説風のナンセンスコメディ

ジャンル的には推理小説を謳ってはいますが、コメディ好きのためのエンタメ小説なので推理小説として読むとまったくの期待外れに終わります。

4つの短編のうち「密室の富豪刑事」は若干推理小説っぽくなっていますが、トリックはありがちなものなので、推理小説としては全く物足りないレベルです。2年半で4話という執筆ペース(遅っ)からも、筒井康隆は推理小説があまり得意ではないことが伺えます。

ドラマの古畑任三郎よろしく登場人物が突然読者のほうへ向きを変えてしゃべりだしたり、毎回事件が解決するたびにどこからともなく署長が躍り出てきたりとコント色が強いです。個人的にはこの署長の登場シーンはきらいじゃないです。3話目くらいからは登場前から笑いがこみ上げてくるほど、所長の登場を待ちわびていました。

 

個性的なキャラが勢揃い

前述の署長もそうですが、個性的なキャラが数多く登場します。作中で著者が何度もしつこく語っているのですが、各キャラにスポットを当てれば小説が1本書けるぐらいのバックボーンがあるらしい(作者談)です。

その中で主人公の神戸大助は富豪の刑事という個性があるものの、金銭感覚がズレていることを除けば、金持ちにありがちな嫌味たらしい発言もなくどちらかというと控えめな性格で、常識人でもあり正義感も強くなかなかの好青年で好感が持てました。

 

ドラマもおもしろい?

「ドラマより原作のほうが面白い」というのはよくある話です。私もどちらかというと原作厨なので原作をひいき目に見てしまいますので、原作が面白かったからといってドラマに興味を抱くことはほどんどありませんが、この富豪刑事はWikipediaを見る限り、原作よりむしろドラマのほうが面白そうだなと感じてめずらしくドラマに興味が沸きました。

ドラマの「富豪刑事」は放送当時その存在は知っていたものの、そのときはあまり興味が沸かず結局一度も見ることはありませんでした。

ちなみにドラマのほうは2005年に「富豪刑事」と2006年に「富豪刑事 デラックス」として2期放送されておりますが、平均視聴率は1期が12.42%、2期が12.04%といまでは10%超えたらヒットといえますが、当時の視聴率的には微妙な感じ。

 

とりあえず1話だけドラマを観てみた

スマホで観たかったので動画配信サービスはHuluの無料トライアルに登録してドラマの富豪刑事を観てみました。

結局観たのは第1話「富豪刑事の囮」のみでしたが、原作との設定の違いや登場人物の演じ方を確認できたので満足しております。視聴後Huluの登録は解除しました。

富豪刑事(ドラマでは女性)役の深田恭子(当時22歳)が役にハマってて、とてもかわいかった。

富豪刑事 DVD-BOX

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総評

ドラマは1話だけしか観ませんでしたが、小説のほうは短編で読みやすくナンセンスな笑いがクセになる小説で気に入りました。著者の苦手な分野のためか残念ながら続編はありません。せっかく個性的なキャラが揃っているのですから、シリーズものとして続けてほしかったです。

短時間で読めるエンタメ小説なので、空き時間にでもどうぞ。

富豪刑事 (新潮文庫)

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