やたらと高評価な中島らもの「ガダラの豚」を読んだ感想

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。

おすすめの小説として何度か目にしたことがある、中島らものガダラの豚を読んだ感想を書いていきたいと思います。

1994年に日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞しており、ジャンルは一応推理小説に属するようですが、推理小説というよりはSFチックもしくはファンタジックなエンタメ小説というイメージです。

3部構成となっており、計3冊にわたる長編で読み応えがあります。

 

登場人物が個性豊か

大学教授の大生部多一郎を主人公として話が進んでいきます。大生部教授はアフリカ呪術の研究においては右に出るものはいないほどの実績をあげる一方、常時ウィスキーを持ち歩くようなアルコール中毒というダメおやじだったりするのですが、とてもお茶目な性格なので憎めないキャラでもあります。ちなみに著者の中島らも自身もアル中だったようです。

ウィスキーをラッパ飲みするシーンが多いせいか、これを読んだ後は無性にウィスキーが飲みたくなり、水割りばかり飲んでいたのにしばらくはストレートで飲むようになりました(笑)。

ほかにも少林寺拳法2段の腕前の助手やニンフォマニアのサイコセラピスト、スプーン曲げの青年、超能力者狩りなどの個性豊かなキャラが登場して読者を楽しませてくれます。

 

第1部 新興宗教編

あらすじ

大生部教授は研究費を稼ぐために、その愛すべきキャラを活かし、不本意ながらもテレビ出演を続けていました。

8年前にアフリカの地で娘を失った悲しみから抜け出せないでいた妻の逸美が、ふとしたきっかけで怪しい新興宗教に入信してしまいます。妻の異変に気づいた大生部教授は同じ番組の共演者である”超能力者狩り”と呼ばれる手品師の協力を得て、逸美を新興宗教の魔の手から救い出そうと奮闘します。

 

みどころ

みどころは奇跡を売りに信者を増やすインチキ新興宗教の教祖が起こした奇跡のトリックを暴いていくシーンと、少林寺の心得がある助手の道満くんが教団本部に潜入した際に繰り広げる教団幹部との異種格闘技戦でしょうか。道満くんはこのとき初めて実戦を経験したことでバイオレンスに目覚め、あとあと活躍の場が設けられることになります。

終盤にも、ガチムチのテレビ局プロデューサーのバイオレンスシーンがありますが、こちらは一方的な暴力でもって相手を痛めつけるだけで、あまりに痛々しく読んでて不快になりました。

 

第2部 アフリカ篇

あらすじ

テレビ番組の企画によって念願のアフリカ再訪を果たした大生部教授一同は目的地のクミナタトゥを目指して広大なアフリカ大陸を旅をします。

 

みどころ

第2部はこの小説の中でもっとも盛り上がるパートであり、第2部すべてが見どころと言っても過言ではないぐらいの面白さです。

滞在先のケニヤの暮らし、食べ物、病気、動物、景色すべてが丁寧に描写されており、その情景が鮮明に頭に浮かんできます。読むだけでアフリカを旅した気分にさせてくれますし、あとアフリカの食べ物に関して無駄に詳しくなれます(笑)。

終盤は緊迫した場面が多く、道満くんの格闘シーンもあり手に汗握る展開がつづくので非常に読みごたえがありました。

 

第3部 決着編

あらすじ

犠牲者を多数出しながらも無事に日本へ帰還した大生部一家。奪われたキジーツを取り返すべくはるか日本まで大宇部を追ってきた最強の呪術師バキリ。大宇部一家と呪術師バキリとの最終決戦が始まる。

 

みどころ?

これまでの伏線を回収しつつ物語は完結しますが、これまでとはまるで違う展開に戸惑いました。

第3部の展開については人によって評価が別れるところではありますが、アフリカ編との落差がありすぎたためか私はまったく楽しめませんでした。

他の作品を読んだことがないので、中島らもの作風というものを知らないのですが、「どうしてこうなった?」と著者に問いたいぐらいです。言い方は悪いですが、第1部と第2部でせっかく築いてきたものを台無しにしてしまうような内容でした。著者としてはあえてそれを狙ったのかもしれませんが、わたしには理解できませんでした。

個人的にはお気に入りキャラである道満くん恒例の格闘シーンがあったのは救いでした。

 

とりあえず第2部まではおすすめ

冒険あり、バイオレンスあり、ちょっぴりエロ?もある壮大なエンタメ小説に仕上がっております。

著者の中島らもは執筆前にテーマに関連する書籍を徹底的に読み漁っていたそうで、この小説にしても超能力や奇術関連、宗教、アフリカに関する記述がこと細かで事前に相当な下調べをしたことは伝わってきます。巻末に記載されている参考文献の多さがなにより物語っています。

個人的には第3部の展開が残念でしたが、とりあえず第2部のアフリカ編までは十分読む価値はありますのでぜひ一度読んでみてください。おすすめです。

 

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)