浅田次郎の名作時代小説「壬生義士伝」を読んだ感想

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。

百田尚樹の永遠の0を読もうと思ってAmazonのレビューを読んでいたら、永遠の0が浅田次郎の壬生義士伝に類似しているというコメントがいくつか出てきましたので、興味を抱き少し調べたところ、百田尚樹自身もツイッターで「壬生義士伝のオマージュである」と公言していました。

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どうせ読むならオリジナルのほうを読もうと思い本書を手に取った次第です。

 

少しずつ吉村貫一郎の人物像が形になっていく

あるインタビュアー(この人物に関する記述はありません)が吉村貫一郎を知る人物に吉村貫一郎について聞いて回るインタビュー形式で話が進みます。

冒頭に出てくる吉村貫一郎はすでに瀕死の状態。ひたすら命乞いをするだけのみっともない落ち武者のように思えた吉村のイメージは、本書を読み進めて事の顛末が明らかになっていくうちに徐々に本来の吉村貫一郎の人物像が浮かび上がってくるという構成となっております。

そして、時間軸が冒頭の満身創痍の状態で命乞いをする吉村視点に戻ったときには最初に抱いた印象とはまったく異なり、もはや涙なしでは読み進めない状態でした。

 

斎藤一がおもしろすぎる

さすがは浅田次郎。どの語り手のパートもおもしろく退屈はしません。

本書には新選組の主要メンバーである近藤勇、沖田総司、土方歳三などが登場します。なかでも斉藤一はインタビューを受ける語り手のひとりとしても登場します。上巻のラストから下巻の始まりまでの、上下巻のつなぎ部分に当てられていることからも、読者の興味を引く重要なパートであることがわかります。

吉村が新選組に入隊した当初は吉村を忌み嫌い、本気で切り殺そうとしていた斎藤一。そんな無慈悲で血も涙もない斉藤一が、悪態をつきながらも吉村の人となりに触れることで内心の変化を見せていくところがこのパートの本筋となります。

吉村とのガチバトル、気に入らない者を闇討ち、任務による暗殺など殺伐としたシーンが多い中、ユーモラスな描写も多く非常に内容が充実していて楽しめました。

 

さすがは浅田次郎

時代小説は苦手で南部藩がどこにあるのかすら知らないほど歴史の知識も乏しいため、わからない言葉が多くてその都度言葉の意味を調べながら読み進めましたので、読むのに大変時間がかかりました。その分いろいろ勉強にはなりました。

壬生義士伝は話がかなり長くて、しかも言葉の意味を調べながら読みましたが、小説の世界に入り込めなかったかと聞かれれば全然そんなことはありませんでした。

感情や風景が丁寧かつわかりやすい表現で書かれており、そのときの場面場面のイメージが頭の中にすっと入ってきてとても読みやすかったです。小説の世界に没頭させるその筆力といいますか読ませる力はさすが浅田次郎というところでしょうか。

時代小説ものに慣れていない私でも十分楽しめましたので、歴史好きの人や、新選組に興味のある人はより楽しめる内容になっていると思います。

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)