浅田次郎の名作時代小説「壬生義士伝」を読んだ感想

      2016/12/28

小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。

百田尚樹の永遠の0を読もうと思ってAmazonのレビューを読んでいたら、永遠の0が浅田次郎の壬生義士伝に類似しているというコメントがいくつか出てきましたので、興味を抱き少し調べたところ、百田尚樹自身もツイッターで「壬生義士伝のオマージュである」と公言していました。

百田尚樹ツイッター

どうせ読むならオリジナルのほうを読もうと思い本書を手に取った次第です。

 

吉村貫一郎とは?

あるインタビュアー(この人物に関する記述はありません)が吉村貫一郎を知る人物に吉村貫一郎について聞いて回るインタビュー形式で話が進みます。

冒頭に出てくる吉村貫一郎は、瀕死の状態でひたすら命乞いをするただのみっともない落ち武者のイメージです。本書を読み進めていくうちに事の顛末が明らかになっていき、吉村を知る人物が語る吉村貫一郎という侍の側面がそれぞれつなぎ合わさって、徐々に本来の吉村貫一郎の人物像が浮かび上がっていきます。

そして、満身創痍で旧知の友に助けを求める吉村貫一郎はいったいどうなってしまうのか?

 

見どころ

さすがは浅田次郎。どの語り手のパートもおもしろく退屈はしません。

本書には新選組の主要メンバーである近藤勇、沖田総司、土方歳三などが登場します。なかでも斉藤一は語り手のひとりとして登場し、重要なパートとなっています。上巻のラストから下巻の始まりまでの、上下巻のつなぎ部分に当てられていることからも、読者の興味を引くパートであることがわかります。

吉村が新選組に入隊した当初は吉村を忌み嫌い、本気で切り殺そうとしていた斎藤一。そんな無慈悲で血も涙もない斉藤一が、悪態をつきながらも吉村の人となりに触れることで内心の変化を見せていくところが、このパートの本筋となります。

ほかにも新選組最強の呼び声高い吉村とのガチバトルあり、気に入らない者を闇討ちしたり、暗殺のシーンなどがある一方で笑える部分もあったりと盛りだくさんです。

酒の席で馴れ馴れしく斉藤一に話しかける吉村に対する「殺してやろう、とわしは思った。」は思わず笑ってしまいました。

おもしろエピソードとしては天満屋事件のドタバタもあって、存分に愉しませてくれました。

 

総評

もともと私は時代小説にそれほど興味がなくて南部藩がどこにあるのかすら知らないほど歴史の知識も乏しいため、わからない言葉が多く、その都度言葉の意味を調べながら読み進めましたので、読むのに大変時間がかかりましたがその分勉強にはなりました。

浅田次郎の小説は他に鉄道員も読みました。しかし、作風というか価値観ががどうも肌に合わず、以後浅田次郎の小説には手を出していません。

壬生義士伝は話がかなり長くて、しかも言葉の意味を調べながら読みましたが、小説の世界に入り込めなかったかと聞かれれば全然そんなことはありませんでした。

感情や風景が丁寧かつわかりやすい表現で書かれており場面場面のイメージが頭の中にすっと入ってきてとても読みやすかったです。小説の世界に没頭させるその筆力といいますか読ませる力はさすが浅田次郎というところでしょうか。

時代小説ものに慣れていない私でも十分楽しめましたので、歴史好きの方や、新選組に興味のある方はより楽しめる内容になっていると思います。

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