【新本格ミステリ】綾辻行人の「十角館の殺人」を読んだ感想

      2016/12/28

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!
1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。(講談社文庫)

今から約30年前に発表された綾辻行人のデビュー作であり、館シリーズの1作目となる新本格推理小説で、新本格ミステリーブームの火付け役となった作品です。

本書はかの有名なイギリスの女流作家アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」をオマージュした作品であり、作中でも「そして誰もいなくなった」について触れられています。

殺人事件の舞台が絶海の孤島だったり、犯人が告白文を瓶に詰めて海へ投げるなどの共通点が多数あり、「そして誰もいなくなった」を既読の方はそういった共通点やあるいは違いなどを楽しみながら読むことができますので、未読の方は先に「そして誰もいなくなった」を読んでおくことをおすすめします。

「そして誰もいなくなった」のトリックは今となっては衝撃的なものではないものの名作には変わりなく、比較的短い話でサクッと読めますしとりあえず読んでおいて損はないかと。発表されたのが第二次世界大戦が勃発した1939年ということがなにげに衝撃的です。

 

ちなみに「十角館の殺人」の英名は「The Decagon House Murders」といいます。

興味がわいたのでほかの多角形についても調べてみました。

一角形 henagon/nonagon ヘナゴン/モノゴン
二角形 digon ディゴン
三角形 triangle/trigon トライアングル/トリゴン
四角形 square/tetragon スクエア/テトラゴン
五角形 pentagon ペンタゴン
六角形 hexagon ヘキサゴン
七角形 heptagon ヘプタゴン
八角形 octagon オクタゴン
九角形 nonagon ノナゴン
十角形 decagon デカゴン
十一角形 hendecagon ヘンデカゴン
十二角形 dodecagonドデカゴン

なんだか怪獣の名前みたいですね。

 

フーダニット(誰が犯人か)? いえ叙述トリックです

孤島に渡った推理小説研究会のメンバー(エラリィ、カー、ポウ、アガサ、ルルゥ、ヴァン、オルツィ)が次々と殺害されていく間、本土では犯人がしかけたエサにつられた元メンバーのドイルこと江南(かわみなみ)によって別の謎解きが進行します。

本土での謎解きは孤島の事件に比べ少々退屈なもので、最初は「こっちの謎解きは必要なのか?」と思っていましたが、犯人が判明する段階になって孤島と本土の話を並行させる必要性をようやく理解できました。

本書のトリックはいわゆる叙述系トリックで、作者によるミスリードにまんまとひっかかってしまいました。途中から犯人の目星はついておりどういう結末になるのか?と期待していましたら、島に残った七つの死体&孤島に渡ったメンバー全員死亡という事実が明かされたときに「えっ?どういうこと?」ってなりました。誰が犯人かはおよそ察しがついていましたが、その犯人の正体には唖然としました。「そして誰もいなくなった」と同じと見せかけて実は違っていたんです。どう違うかは読んでからのお楽しみということで。

 

すべてが終わったあとに犯人によって犯行の一部始終が語れる

事件後は犯人の口から犯行の動機やどのように犯行に及んだのか一部始終が語られます。犯人も自ら「完璧な計画ではない」と語っているのですが、あまりにも危うい計画すぎて「本当に殺人を成し遂げる気があったのか?」と疑問に思いました。このあたりは殺人計画を実行に移す強い意志を持ちながらも時おりメンタルの弱さを露呈してしまう犯人ゆえの計画の甘さでしょうか。

 

総評

古典ミステリーを現代(といっても30年ほど前の)ミステリーの型に落とし込んだ小説。「そして誰もいなくなった」をオマージュしながら、より衝撃的な展開が読者を待っている、そんな作品です。

ハサミ男」や「イニシエーションラブ」などの叙述トリックが好きな方に特におすすめの一冊となっておりますので、ぜひ読んでみてください。

「そして誰もいなくなった」を既読のほうがより楽しめますので、未読の方は「そして誰もいなくなった」を先に読むことをおすすめいたします。

 

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