西澤保彦のSFミステリー「人格転移の殺人」を読んだ感想

      2016/12/28

突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか? 人格と論理が輪舞する奇想天外西澤マジック。寝不足覚悟の面白さ。

1996年に書かれたもので、「七回死んだ男」と同様にSF設定下で起こる事件を推理していくSFミステリー小説です。

七回死んだ男を読んだ感想はこちら

以前読んだ「七回死んだ男」がとてもおもしろかったので、他の作品も読んでみようと思いAmazonにて「西澤康彦」で検索。いくつか上がってきた作品の中でレヴュー数と評価の高い本書を選択しました。

 

SF設定下でのクローズドサークル

いつ、だれによって、何のために作られたのかが不明な、同時に中に入った2人以上の人格を入れ替えてしまうスイッチサークルと呼ばれる装置が存在します。作中では宇宙人が作ったものではないかということになっておりますが、その辺りは最後まで謎のままです。

一度でもスイッチサークルによって人格の入れ替えが起きてしまうと、装置の外に出たあとも本人の意思に関係なく不規則に人格転移が起こります。マスカレード(仮面舞踏会)と呼ばれる人格転移現象を止めるすべはなく死ぬまで人格転移が繰り返されます。

長らく封印されていたその装置に偶然居合わせた年齢も人種も性別もバラバラな男女6人が入ってしまい人格が入れ替わってしまいます。

人格が入れ替わった彼らは、この装置の存在を隠匿するためにCIAによってある施設に一時収容されることとなり、今後の方針について当事者間で話し合うよう指示を受けます。

そして、なぜか監視カメラ一つない閉鎖された施設内で殺人事件が起きてしまいます。

はたして誰の人格が誰の体に入っているときに殺人に及んだのか?その動機は?

 

前置きがやや長いものの緊迫したシーンもあり

実際に施設内で殺人が行われるまでが長いです。人格転移のルールの説明から始まり、6人の人格が入れ替わったあともおのおのの位置関係などの確認などプロット部分にかなりページを割き、6割ほど読み進めてからようやく施設内での最初の事件が起こります。それからは怒涛の如く急ピッチで話がすすみ、緊張感のある展開を迎えます。ちょっとしたアクションシーンもありあっという間に終結に向かいます。

 

人格転移についていけない

人格が入れ替わったあとは体と人格が異なった人物となりますので、体の名前(=人格の名前)という表記になり結構ややこしかったです。

推理をするにしても、あのときあの場所にいたのはAの体で人格はBだったから人格Cにはアリバイがあるけど、そのあと人格転移が起きたからAの体にはDの人格が入っていて・・・とかなりややこしいです。

事件が起きてからはあっという間に収束しましたので、混乱は一時的なものでしたが、展開が早くなった分ついていくのが大変でした。

 

総評

前置きが長かったり人格転移がややこしかったりしましたが、それなりにおもしろかったです。

肝心の人格転移は思いのほか回数が少なかったです。もう少し頻繁に転移してもよかったように思いました。おそらくあまり頻繁に起こると、体と中身の人格が一致しないだけで十分ややこしいのに、さらに読者を混乱させてしまうおそれがあるためできなかったのだと思いますが、もう少し変則的な転移が起きてそれがトリックになるという展開があってもよかったかなと思いました。

人格入れ替え装置が作られた理由についての謎は最後に明かされましたので、この点は腑に落ちてスッキリしました。真相はハッピーエンドとあいまってなかなかよかったと思います。

ただ、やっぱり「七回死んだ男」と比べるとどうしても見劣りしてしまうかな~というのが正直な感想です。

「七回死んだ男」がよかった分、期待しすぎたのかもしれませんが、こういうSF設定自体は好きなほうなので機会があれば西澤康彦のほかの作品も読んでみようと思います。

文庫本に収録されている森博嗣の巻末解説は残念ながらKindle版には入っていませんでした。

 

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