【本格ミステリー】有栖川有栖の学生アリスシリーズ4作目「女王国の城」を読んだ感想

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女王国の城 上 (創元推理文庫)

女王国の城 上 (創元推理文庫)

大学に顔を見せない江神を追って信州入りした英都大学推理研の面々は、女王が統べる〈城〉で連続殺人事件に遭遇する。第8回本格ミステリ大賞に輝いた、江神シリーズ第4長編。

本格ミステリー小説「学生アリスシリーズ(別名:江神シリーズ)」の4作目であり、前作からなんと15年ぶりの続編となる作品です。過去の作品を読んでいなくても十分楽しめる内容となっておりますが、本筋とは関係ない部分も余すことなく楽しむためには2作目の「孤島パズル」、3作目の「双頭の悪魔」を読んでおくことをお勧めします。1作目の「月光ゲーム」はあとから読んでも支障はありません。

概要

舞台は岐阜県と長野県の県境にある新興宗教団体の総本部。今回は推理小説研究部の部長であり、何かとミステリアスなキャラの江神二郎にスポットを当てたお話となっており、江神二郎の過去が明らかになります。

ひとり新興宗教団体の総本部へ赴いた江神部長を心配したいつものメンバーが、江上部長に会うために新興宗教団体「人類協会」の総本部に乗り込みます。そして、お約束の殺人事件に巻き込まれ、さらに過去の事件の謎解きにも首を突っ込みながら事件を解決へと導きます。今回もやはり謎を解くのは江神探偵です。ワトスン役のアリスも少しは貢献したかな?

双頭の悪魔よりも話が長い

前作の「双頭の悪魔」も長かったですが、本書はそれをさらに上回るボリュームで読むのに結構時間がかかりました。しかし、長い。長すぎる。こんなに長くする必要があったのか?というほど長いです。速読の人は平気かもしれませんが、人一倍読むペースが遅いわたしは正直しんどかったです。宗教やUFO関連の蘊蓄が盛り込まれていることが無駄にページ数を増やしているのですが、宗教やUFOにあまり興味のない人にとってはこれらの蘊蓄が語られている部分を読み進めるのはしんどいと思います。本筋とは関係ないため別に読まなくても支障はありませんので、興味のない人は読み飛ばしちゃってもよろしいかと。

上下巻に分かれており、およそ上巻が伏線で下巻が伏線の回収という構成になってます。上巻はそれなりにミステリー要素があって楽しめるものの、わりと単調な展開なのでひたすら黙々と読み進めていく感じです。下巻に入るとかなり動きが出てきますので我慢して上巻を読んでほしいところです。下巻は蘊蓄部分を除けば展開が早く、ちょっとしたバイクアクションなんかもありサクサク読めると思います。

アリスとマリアの恋の進展はあるのか?

前作はアリスとマリアが二手に分かれていたため、交互に話を進めていく構成でしたが、今回ふたりはほとんど一緒に行動をしますのでアリス視点がメインとなりますが、ところどころでマリア視点の描写が挟み込まれています。このマリア視点の部分のマリアのコメントの中にアリスに対する好意が見え隠れしており、これまでとは違う展開を予感させます。

アリスとマリアの関係については、個人的に一番楽しみにしている部分であり、これが読みたいがためにこのシリーズを読んでいるようなものです。そして、今回もたっぷり楽しませてくれました。ネタバレになるので詳細は差し控えますが、アリスとマリアのプチ再会シーンや、ラストの掛け合いはいい雰囲気だったので満足です。

インパクトの薄い真相解明

例によって頭脳明晰な江上部長によって事件の真相が明らかになりますが、もったいぶったわりにインパクトがなさすぎました。「犯人はおまえや!(ドヤァ)」と犯人が名指しされたところで(実際はそんな言い方はしませんが)、("゚д゚)ポカーンって感じでした。このへんはあまり期待しないほうが良いと思います。

読みごたえは十分

ネガティブな面を書き連ねましたが、ボリュームがある分お楽しみはたっぷり詰め込まれています。過去の作品に比べるとエンタメ色が強くなったかなと感じました。その分万人受けするのではないかと思いますし、さすがは第8回本格ミステリ大賞(2008年)を受賞した作品だけあって、本シリーズのファンならずともミステリーファンであれば読んで損はない一冊だと思います。

個人的にはアリスとマリアのラブコメが満載でしたので、それだけで満足です。

女王国の城 上 (創元推理文庫)

女王国の城 上 (創元推理文庫)