建設業界の闇にスポットを当てた池井戸潤の小説「鉄の骨」を読んだ感想

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鉄の骨 (講談社文庫)

鉄の骨 (講談社文庫)

中堅ゼネコン一松組の若手、富島平太が異動した先は、「談合課」と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾くぞ――たしかな技術力を武器に、真正面から入札に挑もうとする一松組の前に、「談合」の壁が立ちはだかる。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!

2010年にNHKでテレビドラマ化もされたゼネコンの談合をテーマとした池井戸潤の企業小説です。

いつものように池井戸潤らしく大手企業対技術力がある弱小企業といういつもの構図で、最後はお決まりの一発大逆転という王道パターンですので安心して読むことができます。裏を返せばワンパターンということになるのですが、新鮮味はない分”ほとんどハズレがない”という安心感からかついつい読みたくなるんですよね。

談合という大きな問題に立ち向かう

ある大きな地下鉄工事の入札を巡って大手ゼネコンと争うことになった中堅ゼネコン「一松組」の若手社員である富島平太を中心に話が進みます。なんとしても落札したい一松組は、一番札の見積もりを作成すべく必死に取引先との交渉を続けていました。しかし、そんな中フィクサーと呼ばれる談合を陰で取り仕切る人物が現れ、さらにその裏には大物政治家の影が・・・。そして、ラストの入札のシーンではどんでん返しが待っている、という盛りだくさんの内容となっております。

恋人とのトラブル話は必要なかったな…

平太のプライベートの話として母親の病気と恋人とのトラブルが描かれていますが、母親の病気の話だけでよかったのでは?と思いました。本筋のストーリーにのめりこみたいのに、安っぽいテレビドラマにありがちな恋人とのトラブル話が合間に挟まってくるおかげでなんかだらけてしまいました。仕事とプライベートを対比させるためだとは思いますが、恋人とのトラブル話はとても不快で正直不要だと思いました。

談合がなくならない理由がわかった気がする

つい最近も東京オリンピックの「海の森水上競技場」の工事が大成建設を中心とするJV(ジョイントベンチャー)によって、99.99%という官製談合を疑われてもしかたがない落札率で落札されたことが話題になりました。本書は昔からある談合の問題について指摘した内容となっており、なぜ談合がなくならないのか?といったことが本書を読むとよくわかります。あと、あまり聞きなれないJVとか官製談合などの用語も出てきますので、業界用語の勉強になりました。建設業界の裏側に興味のあるひとはぜひ読んでみてください。

もちろん、池井戸潤が書いただけあって建設業界に興味はなくとも普通にエンタメ企業小説としても楽しめますので読んで損はないと思います。

鉄の骨 (講談社文庫)

鉄の骨 (講談社文庫)