【S&Mシリーズ】9作目の「数奇にして模型」を読んだ感想

      2016/12/28

密室の中には首なし死体と容疑者が

模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。

S&Mシリーズ9作目となる作品です。しばらくN大から離れた場所で事件が起きていましたが、今回はN大付近の名古屋市公会堂とM工業大(名古屋工業大学?)の2箇所で同時に殺人事件が起こります。

お決まりの密室もあまり意味をなさず、トリックらしいトリックもありませんでした。終盤までは日常ドラマを楽しむ内容となっております。終盤には思わず手に汗握るハードボイルド要素もあり、謎解き以外の部分でも十分楽しい内容でした。

特に意味はないですが、いつのまにか萌絵の愛車がアルファロメオからポルシェのボクスターにかわってます。

初登場キャラが個性的

萌絵のいとこであり、犀川と喜多の中学・高校の同級生にしてオネエキャラという設定の大御坊安朋が登場。強烈な個性を放ちます。

大御坊とレギュラーメンバーとのからみがおもしろいです。喜多とのからみはまるでコントだし、N大の学生である浜中深志や金子勇二、助手の国枝桃子とのからみも笑えました。

S&Mシリーズでは今回限りの登場となりますが、のちの短編集「どちらかが魔女」に収録されている「マン島の蒸気鉄道」にも登場するなど、なかなか使えるキャラです。本書にはのちのマン島の蒸気鉄道の話を予感させる発言が見られ、シリーズを超えての伏線回収となるわけですね。

※マン島の蒸気鉄道は同じく短編集の「地球儀のスライス」にも収録されております。地球儀のスライスはS&Mシリーズがらみの短編以外も収録しており、もともとはこちらがオリジナル。「どちらかが魔女」は各短編集よりS&M、V、Gシリーズ関連のものを寄せ集めた短編集となります。

ほかには萌絵の高校の同級生であり、同じN大の医学部に在籍する反町愛も初登場となります。反町愛、通称ラヴちゃんは次作の「有限と微笑のパン」では出番が多いものの今回はちょい役。終盤、ラヴちゃんの彼氏が登場しますが、意外な人物でビックリでした。

 

萌絵が2度もコスプレ!?

前半に萌絵が2度コスプレするシーンがあります。まず最初に、なりゆきとはいえSF系のコスプレをすることになります。テレビドラマで武井咲も着ていたやつです。本人は不本意(萌絵の性格からしたら当然ですね)だったようですが、どうして不本意なコスプレをすることになったのかというくだりをどうぞお楽しみください。

さらに、ナース服を着て看護師に変装するシーンもありました。こちらは自らの意志によるものであり、病院に潜入するという目的のための手段でしたので特に抵抗なく、かといって喜ぶわけでもなく淡々としていました。

 

金子勇二と犀川先生、イケメンすぎ

いつも脇役であまり目立つことのない金子勇二。萌絵との意外な共通点も発覚するなど、金子勇二のパーソナリティが強く出ており、今回はめずらしく出番が多く目立っていました。ぶっきらぼうで口が悪く、あまりいいイメージのない彼ですが、今回は超イケメンでした。

終盤のハードボイルドシーンでは、犀川先生も活躍します。例によって萌絵が軽率すぎる行動により危険に陥り、犀川が救出に向かうというお決まりのパターンです。苦手なはずの格闘シーンもあったりと、緊張感があり読み応えがありました。犀川も金子に負けず劣らずカッコよかったです。

 

総評

肝心の殺人事件の真犯人については、正しく言い当てるのは難しかったと思います。真相を知ってから読み返すと、たしかに不自然な点が見受けられますが、初読で気づく人はいるのでしょうか。それぐらい犯人当ては難しかったです。

今回は登場人物のキャラクターを前面に出した感があり、このシリーズのキャラクターに魅力を感じている者としては大歓迎でありとても楽しめました。ハードボイルド要素が強かったのも良かったです。

エピローグの後半、鉄道模型のミニチュアの中からふたつの人形がみつかるシーン。伏線回収のスッキリ感とせつなさを兼ね備えたエピソードが印象的でした。

 

 

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