今年読んだ小説のなかで特におもしろかった3冊【2017】

   

今年読んだ小説のなかで特に印象に残っていて、人におすすめしたい作品をご紹介したいと思います。

まず前提条件として、今年出た新作はひとつもありません。基本的に文庫化されたもの、あるいは文庫化されていなくてもセールで割安になったものばかりを読んでいますので、今年読んだといっても旧作ばかりです。

ジャンルは問わず読みますが、ミステリー色の強いもの、謎が解き明かされていく系とか伏線回収系とかが好みです。あと、読みやすい会話主体の文体が好きです。

あと、紙の本を読む習慣がないため電子書籍化されているもの(現状はKindle本のみ)しか読みません。今年読んだ紙の本は、こどもと一緒に図書館にいったときに借りたグリックの冒険くらいです。

グリックの冒険は「ガンバの冒険シリーズ」が生まれたきっかけとなった物語で、ガンバが脇役として登場していたということを知ってから機会があれば読みたいなと思っていた作品でした。

一番有名な2作目の「冒険者たち(イタチのノロイとの戦いを描いた物語)」がおもしろかったので、前作のグリックの冒険も気になって読んでみましたが、冒険者たちにくらべるとスケールが小さいためどうしても見劣りしてしまいます。冒険者たちの前にグリックの冒険を読んでいたらまた印象は違っていたのかもしれません。

 

今年読んだ小説ベスト3

ちょっと脱線してしまいましたが、本題にもどって今年読んだ小説ベスト3を紹介していきます。

サブマリン(伊坂幸太郎)

重力ピエロ、アヒルと鴨のコインロッカー、グラスホッパーなど数々のヒット作を生み出した伊坂幸太郎の小説。2004年に発行された「チルドレン

の12年ぶりの続編となる作品がこのサブマリンです。これほど間があいてしまったのはもともと作者が「続きを書くつもりはなかった」からであり、有栖川有栖の江神シリーズのように続編が放置されてたわけではないみたいです。

たまたまなんかの書評で知って、Amazonのレビューをみたらやたらと高評価だったので、前作のチルドレンと一緒に購入して一気に読みました。

家裁調査官の陣内という、根はいいヤツだけど自己中心的で周りの人に迷惑をかけまくるとても面倒なキャラを中心に話が進みます。交通事故がテーマとなっており、考えさせられる内容ではありますが、正直そういうテーマとかはどうでもよく、個性的なキャラをもつ陣内の言動を楽しむ小説だと思います。

突然わけのわからないことを言ったり、ものすごくわがままだったり、自分が間違っていたとしてもへりくつをこねて絶対に非を認めない。いつも自信満々だけどうまくいかないことも多い。その反面、なにも考えていないように見えて実は思慮深くて情が深くて思いやりがある。凡人ではとうてい真似のできないことを平然と実行する。

ものすごくダサいし、近くにこんなヤツがいたら超めんどくさいだろうけど、最終的には「自分も陣内みたいに振る舞えたらいいな」と憧憬の念を抱いてしまうくらいカッコいい。本を読み終えたころにはまんまとそんな不思議な魅力をもった陣内のファンになってました。

本作を読み終えても、まだまだ謎が残ってるし(チルドレンに出てたあの人がサブマリンには登場しなかったのはなぜか?とか)、今後の展開も気になるしで物語はまだ終わらない感を醸しだしていて、ぜひとも続編が読みたいと思わせるのですが、どうやらこのシリーズはこれで打ち止めのようです。

これで終わりかと思うととても寂しい気持ちになるいっぽうで、いつかまた作者の気が変わって続編を書き始めるのではないかとひそかに期待をしています。

会話主体なのでテレビドラマを観るように読めるため、読書習慣のない人でもすらすら読めると思います。

 

鹿の王(上橋菜穂子)

強大な帝国・東乎瑠から故郷を守るため、死兵の役目を引き受けた戦士団“独角”。妻と子を病で失い絶望の底にあったヴァンはその頭として戦うが、奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた。ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生。生き延びたヴァンは、同じく病から逃れた幼子にユナと名前を付けて育てることにする。一方、謎の病で全滅した岩塩鉱を訪れた若き天才医術師ホッサルは、遺体の状況から、二百五十年前に自らの故国を滅ぼした伝説の疫病“黒狼熱”であることに気づく。征服民には致命的なのに、先住民であるアカファの民は罹らぬ、この謎の病は、神が侵略者に下した天罰だという噂が流れ始める。古き疫病は、何故蘇ったのか―。治療法が見つからぬ中、ホッサルは黒狼熱に罹りながらも生き残った囚人がいると知り…!?
たったふたりだけ生き残った父子と、命を救うために奔走する医師。生命をめぐる壮大な冒険が、いまはじまる―!

中世ヨーロッパあたりの文明レベルの異世界を舞台に、敗戦により敵地の奴隷となった狩猟民族の戦士「ヴァン」と、感染症に関する豊富な知識を持つ天才的な医術師「ホッサル」のふたりの主人公を軸にした物語。

感染症がひとつの大きなテーマとなっており、医師や専門家に監修を依頼しただけあって、医学的なことについてとても子細に書かれています。そのぶん説明がみょうに長ったらしいので、この分野に興味のない人には読むのがめんどくさく感じるかもしれません。

科学的に正確な記述があるものの、あくまでも現実世界とは異なる世界であり、基本的にはファンタジーですので、かたく考えずに気楽に読んでもらいたいです。

性的な表現や残虐な描写がほとんどないし、感染症や政治など小難しい話は理解できなくても、純粋に冒険譚として十分楽しめる内容なので、小学生にもぜひ読んでほしいです。

 

天地明察(冲方丁)

徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。
日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。

算術(数学)をこのうえなく愛する囲碁棋士「渋川春海(しぶかわはるみ)」(男)が日本独自の暦を作り上げるまでの軌跡を描いた時代小説。

現代的でくだけた文体なので時代小説苦手なわたしでも抵抗なく読めました。ラノベを読んだことがないのでわからないのですが、評価を見るかぎりラノベっぽいらしいです。わたしはなんとなく漫画っぽいなと思いました。

そこそこページ数はあるもののとてもテンポよく読めるので、遅読のわたしでもあっという間に読み切りました。

個人的にうれしかったのが、登場人物のほとんどがいい人ばかりという点。池井戸潤の小説に出てくるような性根の腐った唾棄すべき悪役が出てこないので、全編通して気持ちよく読めました。

春海の恋の行方ついては、ありきたりというか多少都合がよすぎるきらいがありますが、そのぶん安心して読めます。わたしは素直に楽しめました。

暴力的な描写や性的な表現が一切ないので、小学生にも安心して読ませられる内容だと思います。まあ、小学生がこれをおもしろいと感じるかどうかは別ですが。

漫画版もあるので、またいつか読んでみたいです。

 

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