西澤保彦の代表作「七回死んだ男」を読んだ感想

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

同一人物が連続死! 恐るべき殺人の環。殺されるたび甦り、また殺される祖父を救おうと謎に挑む少年探偵。どうしても殺人が防げない!? 不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう、渕上零治郎老人――。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは! 時空の不条理を核にした、本格長編パズラー。(講談社文庫)

見た目は高校生、頭脳は中年!?名探偵久太郎のドタバタミステリー

反復落とし穴と名付けた特殊な”体質”により、精神的には同年代の若者の倍の時間を生きているらしく、それゆえ達観しており、およそ高校生には似つかわしくない言葉遣いと思考回路の少年が主人公です。

やたらと大人びている高校生のため、祖父からも一目置かれていたり、年齢を誤解されていたりします。

反復落とし穴とは、主人公だけが何度も同じ1日を繰り返し体験するという、いわゆるループ系の能力ですが、本人の意思とは無関係に発動する故に主人公の久太郎(ヒサタロウ)はこれを能力と呼ばず体質と呼んでいます。

毎年恒例の親戚一同が集う場で、祖父が何者かに殺害されたその日偶然”反復落とし穴”が発動。繰り返される”事件の日”の中で祖父を死なせない為に、あれこれ手を尽くして孤軍奮闘する話となっております。

 

表紙絵とタイトルのイメージとは違い内容はコメディタッチ

表紙絵とタイトルから受る恐ろしげな印象と異なり、全般的にコメディタッチに描かれておりグロテスクな描写は一切ありません。

とにかくユニークなキャラが多く、思わず声に出して笑ってしまう珍事件なども起きたりして喜劇としても楽しめました。

文体はくだけており安物の漫画のような独特のセリフが多く、最初はちょっと戸惑いましたが、ユーモアあふれるコメディタッチなノリに慣れてきたらそのくだけた感じも逆にしっくりくるように感じました。ただ、登場人物の名前が珍妙なネーミングかつルビがないので非常に読みづらいので、名前にはルビをふっておいてほしかったです。

 

SF的設定下での本格ロジックパズル

文体はくだけていて、コメディ満載で、しかも”反復落とし穴”というSF設定にもかかわらず、肝心のミステリーは本格ロジックパズルを展開していきます。一見成立しなさそうな設定ではありますが、”反復落とし穴”を明確にルール化した上でロジックが展開されますので意外と矛盾はなく、いろいろ謎を抱えながらも面白おかしく読み進めていくと、最後にはきちっとパズルがハマってスッキリさせてくれます。

 

ラブコメ要素あり

ラブコメが好きなので、常々、推理小説にもラブコメ要素を求めてしまうのですが、この小説はラブコメ好きにもたまらないものでした。

久太郎の恋路はいささか強引といいますか都合がよすぎる展開で、唐突な感じがするものの、甘酸っぱい青春を感じさせてくれます。

 

大らかな気持ちで読んでほしい

わたしは推理小説を読むときは何も考えずに読み進めますので、気になりませんでしたが、よく考えれば「この推理の論拠は無理があるんじゃない?」という部分があるかと思いますので、本格ミステリを求めている方は期待はずれとなるかもしれません。

ダマされないと楽しめないのであえて書きませんでしたが、いわゆるどんでん返しも用意されております。

ユーモアもラブコメも楽しめるので、個人的にはとても気に入っている小説です。わたしは一度読んだ小説を読み返すことはあまりしないのですが、この小説は特別で2度3度読み返していましました。

あとがきによると、著者の西澤保彦さんは、「もともとSF作家になりたかったくらいSFが好き」なこともあり、「人格転移の殺人」や「瞬間移動死体」などのSF要素を含んだ作品をいくつか書かれていますが、この「七回死んだ男」は著者の代表作と呼ばれているだけあって、折り紙つきの面白さとなっております。 少しでも興味を持たれたなら、ぜひ読んでみてください。オススメです。

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)