- 「成長ホルモンは筋肥大に有効」のロジックはすでに破たんしていた
- インターバル設定の目安
- 種目によって必要なインターバルは異なる
- 実際にインターバルの長さを変えてみて思うこと
- 結論:筋肥大を狙うなら短インターバルにこだわる必要なし
筋トレ業界において、「筋肥大のために最適なインターバルは1分」という定説はずいぶんと長い間支持されてきましたが、近年、それは実は誤りであったという研究結果が報告されるようになってきました。
「成長ホルモンは筋肥大に有効」のロジックはすでに破たんしていた
この「筋肥大のために最適なインターバルは1分」の根拠となるのは、「インターバル1分のときがトレーニング直後の成長ホルモンの分泌が最大になるためであり、その成長ホルモンの作用によって筋肥大(タンパク質合成)が最大化する」というものでした。
しかし、近年の研究によって「成長ホルモンは筋肥大とは相関関係にない」ということがわかり、長年定着していた「成長ホルモンは筋肥大を促す作用がある」という定説は覆されてしまいました。
※NCBI…アメリカの国立生物工学情報センター
これにより「インターバル1分にして成長ホルモンを最大化させることにより筋肥大も最大化」というロジックは破たんしたわけです。
短インターバルは効果がないどころか弊害も
さらに2016年のイギリスのバーミンガム大学による報告(NCBIのぺージ)において、インターバル1分は筋肥大に貢献しないどころか逆に筋肥大効果を弱めてしまう可能性が示唆されました。
インターバル1分のグループと5分のグループでは、トレーニング直後におけるタンパク質合成の数値がそれぞれ76%と152%と2倍の開きがあったのです。
成長ホルモンの分泌量はインターバル1分のほうが多いので、これまでの定説が正しければインターバル1分のグループのほうが数値が高くなるはずが、逆にタンパク質合成の数値が低下しています。
長めのインターバルのほうが筋肥大に有効だった
その他の実験結果(NCBIのページ)を見ても同様に長めのインターバルの優位性が示されています。こちらは1分と3分での比較ですが、インターバル3分のほうが、筋力・筋肥大ともに好結果となっています。
筋肥大を目的として筋トレを行う場合、少なくとも「インターバル1分」にはメリットがないことは明らかです。
インターバル設定の目安
先ほど紹介した研究ではいずれもインターバルが長いほうが筋肥大に効果ありという結果がでていました。つまり、しっかりと休んで毎回筋肉を十分に回復させることが重要であるといえます。
では、どうやってインターバルを決めればいいか?
筋肉を十分に回復させるために必要なインターバルは、運動強度、部位、疲労度、習熟度などさまざまな条件が絡んでくるので、実際にいくつかインターバルの時間を試してみて、最適なインターバルを探っていく必要があります。
たとえば、すでにウォーミングアップを済ませたうえで第一種目として8RMの重量でデッドリフトを3セット行うと仮定します。
※8RM=1セットでぎりぎり8回反復できる重量のこと
2分・3分・4分とインターバルを変えてみて、次のセットの反復回数が下の表のようになる場合。
2分 | 3分 | 4分 | |
反復回数 | 6回 | 8回 | 8回 |
3分と4分はいずれも8RMの最大回数である8回反復できているので、総レップス24回となり総負荷量は最大となります。
1セット | 2セット | 3セット | 計 | |
反復回数 | 8回 | 8回 | 8回 | 24回 |
ところが、2分では2セット目以降の反復回数が減ってしまうので、3分と4分にくらべ総レップスは20回となり総負荷量は少なくなってしまいます。
1セット | 2セット | 3セット | 計 | |
反復回数 | 8回 | 6回 | 6回 | 20回 |
つまりこの場合、総負荷量を最大(筋肥大効果を最大)にするためにはインターバルは3分以上必要ということがわかります。
ただ、必要以上に休んだところで8RMの重量では反復回数は8回より増えることはないので、時間効率を意識した場合の最適なインターバルは3分といえます。
種目によって必要なインターバルは異なる
使用する筋肉の大きさや運動強度により当然、筋肉の回復時間は異なりますので、種目別にインターバルを変える必要があります。
ちなみにわたしの場合、「反復回数を維持するために必要なインターバル」はだいたいこんな感じになりました。
種目別インターバルの一例
- デッドリフト、スクワット…3分
- ベンチプレス、チンニング、ベントオーバーローイングなど…2分半
- ショルダープレス、プルオーバー(軽重量)など…2分
インターバルの長さはおおむね扱う重量や使う筋肉の大きさに比例していますね。
上記のインターバルの時間は絶対的なものではなく、同じ種目でも疲労度・熟練度・得意不得意などの条件が違えば必要なインターバルは変わってきますので、状況に応じてインターバルの長さを調整しています。
実際にインターバルの長さを変えてみて思うこと
実際にインターバルの長さを変えて感じたことは…
短インターバルに比べ肉体的にも精神的にもにラク
しっかり休むことにより、毎回呼吸が整うので全然きつく感じないですし、筋肉に疲労物質が溜まりにくいからか、総負荷量が増えているのにもかかわらず疲労感が少ない気がします。実際には疲労しているはずですが、短インターバルのときのように筋肉が焼けつくような感覚がほとんどないためそう感じるのだと思います。
疲労が溜まらないのでフォームがくずれにくい
短インターバルで追い込んでいくと、どうしても疲労が溜まってきてフォームが崩れがちになりますが、前述のとおり毎回リフレッシュした状態で集中してできるので、最後まで正しいフォームを維持しやすいです。
フォームがくずれにくいということは当然、怪我のリスクが減りますので、長期的にトレーニングを続けるうえで大きなメリットになると感じました。
トレーニング時間が長くなる
同じセット数なら、休憩時間が長くなる分、必然的に短インターバルに比べ筋トレの時間が長くなります。わたしの場合、デッドリフトやスクワットなどのコンパウンド種目についてはだいたい3分くらいは休んでいますが、最初のころはただ体を休めているだけの3分はとても長く感じました。
トレーニング時間が限られている場合は、種目数を減らすか、セット数を減らすことになりますので、一日で全身鍛えるようなメニューは組みづらくなりますが、その分、集中して取り組めるようになりますし、オーバーワークの防止に役立つという利点もあります。
わたしもそうですが、中級者以上になると筋トレが好きすぎてついやりすぎてしまうことが多いので、インターバルをしっかりとることでやりすぎを防止できるのはわりと重要だったりします。
結論:筋肥大を狙うなら短インターバルにこだわる必要なし
今後さらに研究が進むうえで再びセオリーが覆る可能性はもちろんあります。しかし、現時点においては、タンパク質合成が弱まる可能性がある以上、あえて短インターバルを採用する理由はありません。
とはいえ、筋トレにそれほど時間を割けない場合はそんなことはいってられないので、時間効率を優先して短インターバルで数をこなしたほうがいい場合もあるでしょう。
十分に時間がとれる場合も、長期的なトレーニングの中で必ずおとずれるプラトー(停滞期)対策として、一時的に短インターバルを採用するのはありかもしれません。
ただ、基本的には時間に余裕のあるときはセット間のインターバルは長めにとって、しっかりと休んだほうが筋肉の成長にとってはプラスになるのは間違いなさそうです。