ベンチプレスをすると肩が痛くなることはありませんか? それはもしかしたら、グリップ幅が広すぎるのが原因かもしれません。
わたしもいまから1年ほど前までは、ベンチプレスをするとどうしても肩が痛くなるためまともにトレーニングができず、当然扱う重量も伸びませんでした。
でも、グリップ幅を見直して適切なグリップ幅で行うようになってからは以前のように肩が痛くなることはなくなりました。
筋肥大目的のベンチプレスにおいて肩に負担をかけない適切なグリップ幅は肩幅の1.5倍以内です。
肩幅の1.5倍以内の根拠
ではなぜ肩幅の1.5倍以内がいいのかというと、ベンチプレスのグリップ幅が肩幅の1.5倍を超えるとケガのリスクが高まるからです。
summary: Bodybuilders, athletes, and recreational lifters select a grip width during the bench press that they believe will produce a greater force output. Research has demonstrated that a wide grip (> 1.5 biacromial width) may increase the risk of shoulder injury, including anterior shoulder instability, atraumatic osteolysis of distal clavicle, and pectoralis major rupture. Reducing grip width to <=1.5 biacromial width appears to reduce this risk and does not affect muscle recruitment patterns, only resulting in a +/-5% difference in one repetition maximum. (C) 2007 National Strength and Conditioning Association
The Affect of Grip Width on Bench Press Performance and Risk of Injuryより引用
この要約部分を簡単に訳すと「肩幅の1.5倍を超えるグリップ幅でベンチプレスをすると、大胸筋や肩関節を損傷するリスクを高める可能性があることが研究により実証されており、肩幅の1.5倍以下にすることで危険性を減らすことができる」となります。
例えば、肩幅が45cmの人であればグリップ幅を67.5cmを超えないようにすれば、ケガのリスクを減らせるというわけです。
肩幅の基準
ここでいう肩幅は、腕のつけ根の肩峰と呼ばれる骨が出っ張った部分を結んだ距離のことを指します。
イメージしにくい場合は、「biacromial」で画像検索するとわかりやすい写真やイラストが出てきますので、それを参考にしてみてください。
グリップ幅の基準
ちなみにグリップ幅とは、シャフトを握ったときの左右の人差し指の内側のラインどうしの距離を指します。
”グリップ幅=81cm”の誤解
「ベンチプレス グリップ幅」で検索すると、やたらと81cmという数字が目につきます。でも、本当に81cmが正しいグリップ幅でしょうか?
そもそもこの81cmという数字はどこからきているのでしょうか?
グリップ幅81cmの由来
実はこの81cmというグリップ幅はパワーリフティング競技のルールに由来します。
日本パワーリフティング協会のルールブックには以下のように記載されています。
(g)バーの握り幅は、左右の人差し指間で最大81㎝とし、人差し指は81㎝のマークより内側の部分になければならない。(どこから見ても81cm のマークが隠れている事
ルールブック - 日本パワーリフティング協会(PDF)より引用
競技としてのベンチプレスでは、ルール上、グリップ幅を81cmより広くしてはいけないという決まりになっているのです。
一般的にグリップ幅を広げれば広げるほど、より高重量を挙上できるようになるため、競技者が同条件でベンチプレスを行うためにグリップ幅が制限されているわけです。
グリップ幅81cmは筋肥大目的のベンチプレスとは無関係
あくまでも競技としてのベンチプレスのルールに過ぎません。パワーリフティング競技を行う予定のある人は当然意識すべきですが、筋肥大を目的としてベンチプレスを行う場合は、81cmというグリップ幅にこだわる理由はありません。
肩に負担の少ないベンチプレスのフォーム
ベンチプレスで肩を痛めないようにするためには、グリップ幅以外にも気をつけるべき点があります。
それは「ボトムポジションで脇を開きすぎない(肩の外転角度が90°にならない)ようにする」ということです。
人体の構造上、肩を90°外転した状態で肘を引くと肩関節に無理な力がかかり肩を損傷してしまう危険性があるためです。
Starting Strength Basic Barbell Trainingより引用
上の図でいうと左側がちょうど肩の外転角度が75°くらいで、右は90°になっています。
右のほうは肩峰あたりにIMPINGEMENT(衝突)と書かれている部分で肩の骨と腕の骨が衝突しています。 ここに腱板が挟まれてしまい痛みが発生します。この状態がつづくと腱板損傷(肩のケガ)につながるわけです。
ボトムポジションで肩の外転角度を90°にすると、大胸筋が最大限ストレッチされるため、効いているような感じがしますが、肩にとっては非常にリスクが高いため、肩を痛めないためにはベンチプレスのボトムポジションでは絶対に肩の外転角度を90°にしてはいけないのです。
脇の開きすぎを防ぐためには
ボトムポジションで脇が開きすぎないようにするためには、前述のグリップ幅が関わっていきます。
ベンチプレスにおいて大胸筋にしっかりと負荷をかけるためには、ボトムポジションにおいて前腕が垂直になるようにすることが重要です。
このときグリップ幅が広すぎると、どうしても脇が開きすぎてしまいます。
適切なグリップ幅(肩幅の1.5倍以内)にすることで脇の開きすぎを防ぐことができます。
適切なグリップ幅で前腕が垂直になるようにバーベルを下ろしていくと、自然と脇が開きすぎずボトムポジションではちょうどいい外転角度になります。
ボトムポジションである程度脇が閉じているため、必然的にバーベルをみぞおち付近に下ろすことになります。真横から見るとバーベルは垂直に移動するのではなく、弧を描きながら斜めに移動します。
脇の開きすぎを防ぐポイント
- グリップ幅を広げすぎない
- 前腕が垂直になるようにバーベルを下ろす
上記の2点を意識してベンチプレスを行えば脇の開きすぎを防ぐことができます。下にわかりやすい動画を貼りつけておきますので、参考にしてみてください。
参考動画(3分弱の短い動画です)
How to Perform Bench Press - Tutorial & Proper Form
グリップ幅は狭め。シャフトがみぞおちあたりに降りてきているため、ボトムポジションでは適切な脇の開き具合(肩の外転角度)となっています。
グリップ幅を見直したらベンチプレスの重量が大幅アップ
わたしの場合、約1年前まではベンチプレスは40kgが限界でした。これ以上は肩の痛みに耐えられず重量を増やすことができませんでした。
グリップ幅を広くしてボトムポジションで脇を思いっきり開いたフォームでやっていたことにより、肩にかなり負担がかかっていたのだと思います。
もともと趣味のバレーボールで肩を痛めており、なにかにつけて肩に痛みがでやすかったこともあり、ベンチプレスの重量を増やすことはなかばあきらめかけていました。
しかし、筋トレをするにあたりBIG3のひとつであるベンチプレスを外すのは非常にもったいので、なんとかベンチプレスができないものかと、ベンチプレスで肩を痛める原因をあれこれ調べていたところ、それらしい原因が判明。
もしかしたら広すぎるグリップ幅が原因かもしれないということでフォームを見直すことにしました。
それからグリップ幅を肩幅の1.5倍以内にして脇を開きすぎないフォームに矯正したところ、いままで感じていた肩の痛みはまったく発生しなくなりました。
肩に痛みが出ないため、その後扱う重量は自分でも驚くほど順調に伸びていき、この1年で70kg(6RM)まで重量を増やすことができました。
最初は、なんとなく窮屈で大胸筋があまりストレッチされていないように感じられたフォームも、しだい慣れてきてしっかりと大胸筋を使ってバーベルを挙げられるようになりました。
人に指摘される程度には胸のサイズもアップしてきているので、ちゃんと大胸筋に効かせられているのだと思います。
まとめ
長々と説明してきましたが、ベンチプレスで肩に負担をかけないために意識すべきことは以下の2点。
- グリップ幅を広げすぎない
- 前腕が垂直になるようにバーベルを下ろす
これらを意識して行うことによって、肩の損傷リスクを抑えることができます。
ベンチプレスをすると肩が痛くなるという人は、
- グリップ幅が広すぎないか?
- ボトムポジションで脇が開きすぎていないか?
を一度チェックしてみてください。
参考書籍
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日本語版も出ました。
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ダルビッシュ有もスターティングストレングスを読んでるみたいですね
真冬のガレージトレーニングはマジで寒い。
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) January 1, 2021
だけどスクワットやるとすぐに温まる😆 pic.twitter.com/sBEyyTNuJS