
- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/02/25
- メディア: 文庫
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ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った! この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか?自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、果たして肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるのか?著者会心の長編第一作! *『このミステリーがすごい!'98年版』1988-1997 10年間のミステリーベスト10国内編 第1位 *『もっとすごい!!このミステリーがすごい!』1988-2008年版ベスト・オブ・ベスト国内編 第2位
アメリカの片田舎で死者が甦るという不思議な現象が起こります。秘密とかカラクリがあるわけではなく、なぜか生き返ってしまう。死者が生き返る理由は最後まで謎のままです。
この小説は七回死んだ男と同じくSF設定下でのミステリーですので、まずはこのSF設定を受け入れなければいけません。
この設定を受け入れることができるかどうかで、この小説の評価が分かれると思います。私はこの設定を受け入れましたが、欲を言えばこの怪現象にもちゃんと理由があって、さらにストーリーに絡んでくれればよかったな思いました。ただ、そのあたりのマイナスポイントを差し引いても十分読む価値のある作品であると思います。
舞台がアメリカなのには理由がある
この小説は山口雅也という日本人によって書かれたものです。
海外の作品って言い回しが独特だったり、土地や文化になじみがなく情景を頭に思い浮かべることができず読みづらいという苦手意識があり、あまり読まないようにしているので、この作品の存在を知って最初にこの小説の説明文を読んだとき、てっきりアメリカの作家が書いたものだと思ってスルーしてしまいました。
でも、あとからやっぱり読みたくなって再度チェックしたときに、初めて日本人が書いたものであることを知りました(初回に気づけよって話ですが)。
じゃあなんでわざわざ日本人がアメリカの片田舎を舞台とした小説を書いたのか?という疑問が自然にわいてきますが、これにはちゃんと理由があって、この小説のトリックや殺人の動機などがアメリカの片田舎でないと成立しないものになっており、必然的にこういう設定にしてあるということです。
実際に読んでからのお楽しみですが、これにはなるほどと思いました。舞台がアメリカってことを考慮しないと謎が解けません。
文体はアメリカンチックですが、日本人が書いたものだけあって、海外作品が苦手な私でも読みにくいということはありませんでした。
表紙絵のイメージとは違い内容はコミカル
屍や死という文字が入るタイトルや、なんとなく不気味な表紙絵から受ける恐ろし気な印象とは異なりホラー描写はありません。
普通の推理小説同様、作中で死人は出るものの(でも、すぐに生き返る)、全体をとおしてコミカルに描かれております。
好感がもてる主人公
主人公であり探偵役のグリンはいいやつなのでとても好感が持てます。見た目はパンクで単なる悪ガキに見られますが、実際はインテリで思慮深くしかも心優しい好青年なのです。
上記の説明文にもあるとおり、残念ながら途中で命を落とすのですが、例にもれずグリンもすぐに復活を遂げ、自身の死を隠しながらも肉体が滅ぶ前になんとか事件を解決しようとがんばります。
総評
生命活動を停止した肉体が動き回れてしまうという、SFというよりはファンタジーよりな設定を受け入れられるかどうかで評価がわかれるかもしれません。
葬儀やタナトロジー(死に関する学問)などの薀蓄が満載で、そのぶん話が冗長となり結果ページ数が膨れ上がって読むのに時間が掛かるし、中だるみしてしまいますが、まあ一応勉強にはなりますので良しとします。全然興味のない分野ですけど。
そんなマイナスポイントはあるものの、ジョークを交えた会話が楽しく、おもしろハプニングあり、ラブコメありと全体とおしてコミカルで面白おかしく読めましたし、読んでるうちにこのままずっと読んでいたいと思えるほど好きになりました。
ラストシーンもまたイイです。
純粋に推理を楽しむものではありませんので、本格推理を求める方には合わないかもしれませんが、七回死んだ男を面白いと感じられるようなSF設定を受け入れられる人はきっと楽しめると思います。

- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/03/29
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