森博嗣の理系ミステリィ「すべてがFになる」を読んだ感想

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

数多くの小説を執筆し、すでに引退宣言をしている森博嗣のデビュー作にして代表作であり、1996年に第1回メフィスト賞を受賞した理系ミステリィです。2014年には綾野剛と武井咲というキャストでドラマ化もされたこともあり、再び注目を浴びて累計発行部数も伸び、昨年の時点で78万部とかなりロングテールで売れています。

シリーズ1冊目にして森博嗣の代表作

本書はその後に続くS&Mシリーズの1作目となる作品です。実は執筆としては4作目だったらしいのですが、「当時の編集長がこの作品を最初に出すと決めたので、この順番になった」と自身のエッセイの中で語られています。どういう理由で順番を変えたのかはわかりませんが、この判断は正しかったのではないでしょうか。

自身のエッセイで、

僕は、賞を狙って応募したのではなく、ただ、作品を書いたので適当な出版社へ送っただけだったが、「メフィスト賞」という賞が突如創設され、受賞第1号としてこの作品がでた。このあとも、メフィスト賞を受賞してデビューした作家が何十人と出ているのだが、メフィスト賞に応募しないで受賞したのは僕だけである。 (エッセイの「作家の収支」より)

と語っており、本書に対する出版社の期待が高かったことがうかがえます。

S&Mシリーズの中でも本書はインパクトが強く、本書を読んだことによって、S&Mシリーズの、あるいは森博嗣のファンになった方も多いと思います。私もS&Mシリーズの大ファンで、このシリーズはすべて読みました。

S&Mシリーズの魅力

S&Mは、主役?の大学助教授「犀川創平」とヒロインの大学生「西之園萌絵」のイニシャルを示しています。頭脳明晰な犀川先生が探偵役となり奇妙な事件の数々極めて消極的な姿勢ではあるもののを解決へと導いていくというストーリーです。

純粋にミステリィとして楽しんでおられる方には申し訳ないのですが、日常の場面における犀川先生と萌絵の掛け合いが楽しすぎて謎解きとかトリックとかどうでもよく感じられてしまうほどです。ミステリィに興味はなくともラブコメのみで十分楽しめます。

逆に純粋にミステリィを楽しみたい方には少々物足りないかもしれません。売り文句に”新しい形の本格ミステリィ登場”とあり、”本格”の部分には違和感を覚えますが、”新しい形のミステリィ”であることは間違いないと思います。

理系らしいクセがある

元大学助教授の森博嗣らしく理屈っぽい言い回しが散見され、登場人物を通じて持論を展開するなど多少クセがありますで、好き嫌いが分かれると思います。そのかわり文体は理系らしくまわりくどい表現はなく読みやすいです。おそらく理系の人ならそれほど違和感なく受け入れられると思います。

本書は孤島にあるエンジニアの職場が舞台となっており、一般的には馴染みのないコンピュータ用語が頻出しますので、コンピュータ用語に疎い方は読みにくいかもしれません。トリックにも関係してきますので、そのあたりの知識がないとトリックを見破ることは難しいと思います。私もトリックを暴くことはできませんでしたが、「なるほど、そういうことか!」と納得したのと同時によくこんなトリック思いつくな~と感心しました。

総評

S&Mシリーズの中でも特別な作品で、シリーズ1作目にして最高の一冊といえる作品です。このシリーズのカギとなる真賀田四季の登場、洗練された理系トリックにどんでん返し、となかなか充実した内容となっております。シリーズ全10作を読むのはしんどいけど、どういうものか気になるという方はとりあえず本書を読んでおけばOKです。

犀川と萌絵の今後の進展が気になる方は本書だけでなくシリーズ通してぜひ読んでほしいところです。ラブコメ目的で読んでも十分満足できると思います。わたしは完全にハマってしまい、S&M以外のシリーズも手を出す羽目になりました。

まだ読んでない人はぜひご一読ください。おすすめです!

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)


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