【S&Mシリーズ】3作目「笑わない数学者」を読んだ感想

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され……。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。

超絶かどうかは別として、S&Mシリーズの3作目となる作品です。

S&Mシリーズは毎回凝った建築物が出てきます。本書も例外ではなく、オリオン座を模した3つのドームからなる三ツ星館と呼ばれる架空の建築物が事件の舞台となります。

このシリーズはたいてい犀川と萌絵が通う大学(作中では那古野市のN大とされていますが、那古野は名古屋市、N大は名古屋大学を指しています)の周辺で事件が起こりますが、今回は少し遠出をして三重県まで出張します。

三ツ星館がある場所は三重県の津市と伊賀市の境界にある青山高原。津市出身のわたしにとっては非常に身近な場所です。小学生のときは遠足で行きましたし、大人になってからは流星群を見に行ったり、知人の別荘に遊びに行ったりと個人的に思い出深い場所です。

 

個性的なキャラが登場します

今回は前作の「冷たい密室と博士たち」では皆無だった個性的なキャラが登場します。三ツ星館の主であり天才数学者の天王寺翔蔵博士を筆頭に、冴えないふりして実は切れ者の刑事だったり、やたらと犀川に色目を使う美女が物語に彩を与えてくれます。

特に天王寺翔蔵博士は強烈な個性を放っており、これぞS&Mシリーズといえる天才らしいものの考え方や会話が楽しめます。

犀川と萌絵のかけあいが最高!

舞台が県外でプライベートなパーティに参加とあって、S&Mシリーズのレギュラーメンバーの出番はほとんどなく、その分、ふたりのかけあいをたっぷり味わえるというファンにはありがたい内容となっております。

しかも、クリスマスイヴというロマンチックなシチュエーションがより一層期待を高めてくれます。

とはいえ、結局殺人事件に巻き込まれてしまうわけで、気の毒ではありますがふたりの間には事件は起こりません。せっかくのクリスマスイヴなのにね。

今回はめずらしく犀川の内面の描写があり、萌絵に対する思いが描かれております。おおかた想像どおりではありましたが、積極的にアピールする萌絵に対して、犀川が自分の気持ちを抑えてあえて距離を保とうとする理由がハッキリします。

さらに犀川のおもしろエピソードもあり、普段は浮世離れしている犀川がすごく身近に感じられるシーンがあり新鮮でした。

萌絵に関する迷言「サンドイッチのようなもの」や「こころのひび」なども飛び出し、ファンの期待を裏切りません。

オリオン像消失のトリックに過度の期待は禁物

肝心のオリオン像消失の謎については、犀川に「想像もつかない」と言わせるぐらいだから、もっと高度なトリックを期待してしまいました。でも実際は、他の人はともかく、犀川ならもっと早い段階で見破れるはずだろうと思われるレベルのものでした。構成上、最後までひっぱる必要があったとはいえここはちょっと期待外れでした。まあ、S&Mシリーズはトリックが売りじゃないし…(小声)

真相は不定?あるいは些末なこと?

本書では一貫して「定義」は自分で決めろというメッセージが込められています。今回の事件も犀川によって一応解決はするものの、天才科学者である天王寺翔蔵博士にまつわる真相についてはうやむやなまま終わってしまいます。真相については自分自身で結論づけろということかもしれませんが、どうもすっきしません。それとも気にするほどでもない「トゥリビアル(些末なこと)」ということでしょうか。

総評

本書はS&Mシリーズの中でもお気に入りの作品です。犀川と萌絵のかけあいが秀逸ですし、個性的なキャラも登場する本書はS&Mシリーズらしさを十分に味わえます。

S&Mシリーズはそれぞれ単独で読んでも差し支えないように書かれていますが、作品の魅力を余すことなく味わうためには、やはりシリーズ通して読まれることをおすすめします。

すべてがFになるを読んでおもしろいと感じたら、本書もぜひ読んでみてください。犀川と萌絵のキャラクターに魅せられた人にとっては必読の一冊ですよ。

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)


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